「クリンソウの自生地に出会って」 
(会報1号)
       
会長 樋口 清一
二〇〇七年八月三〇日、雨模様の日、多紀連山に入りクリンソウ自生地に案内してもらった。その二週間前に三岳登山道にクリンソウの群落があるとの報告を受けていた。多紀連山には何箇所かクリンソウの自生地があるのは知っていたが三岳登山道では確認していなかった、報告の通り三岳登山道の下で確認した、そこから谷を下った下流で、あの大群落に出会った。この時期だから花はなかったが、大きな葉が植えたかのように整然と谷を埋め尽くすのを見て足が震えて止まらなかったのを覚える。
この日から私の苦悩?が始まった
最初私は「兵庫県自然保護指導員」という立場で動いていた。地元の関係者たちの聞き取り、発見者グループと共に市当局と保護について話し合いなど繰り返し、
ついに「多紀連山のクリンソウを守る会」を立ち上げるに発展した。この頃からは発見者グループの皆さんのエネルギーに圧倒され、引っ張られてきた。今振り返ると発見者グループの「クリンソウの花園を守る」という純粋な気持ちのエネルギーが、私にも移ってきたようだ。全国的にも例がないと思うほど自生地の規模が大きくて、公開せざるを得なかった事情もあるが、公開した以上「自生地保護」と「観光地化」の両立のモデルにしたい。多くの人は「保護」と「観光」は相反するとしているが、この一年間の守る会の活動を振り返り、「保護」と「観光」は「車の両輪」の関係に思えてきた。どちらが強くても真っ直ぐには進まない。保護の車が強く回転すれば閉鎖に向かうし、「観光」の車が強く回転すれば自生地は荒れ果てるに違いない。速度は遅くとも両輪のバランスをとりながら真っ直ぐに進めたい。会員は勿論、地元住民、篠山市民の力で地域の財産を次世代に引き継ぐ努力を続けましょう。